先日、このブログの記事「わたしの田舎暮らし願望の原点」の冒頭にも書いたように、2023年12月28日、わたしと家内は山梨県甲州市の新しい家に引っ越してきました。わたしたちにとって、ここまで来られたことは非常に感慨深いものがあります。
元々、わたしには定年退職後に田舎暮らしをしたいという願望がありました。加えて、油彩画家である家内が毎年大きな作品(130号、1940 x 1620mm)を制作するため、作品の保管場所も必要でした。東京都内でレンタル・スペースを探しましたが、費用や利便性の面で適切な場所は見つけることはできませんでした。
そのため、わたしたちは40歳代の頃から、家内の作品保管場所兼アトリエ兼住居を建てられる土地、または利用可能な古民家を様々な地域で探しました。東京近郊の千葉県、神奈川県、埼玉県をはじめ、軽井沢や清里といった別荘地も訪れました。そうして、たまたま訪れた不動産屋の紹介で、現在の土地に巡り会ったのです。

母屋が建つ前のわたしたちの土地は、家内のアトリエがポツンと立っているだけだった
約20年前に、この土地を購入した後、まず建てたのは家内の作品保管場所兼アトリエでした。当時住んでいた東京・世田谷の家は家内の作品で6畳の和室が一杯になっていたため、至急、保管場所が必要だったのです。わたしはまだ勤めていたため、母屋を建てるのはまだ先と考えていました。それで、家内のアトリエを別荘代わりに使い、都内の自宅との二拠点生活を続け、夏場には野菜作りも始めました。
一方で将来の母屋建築を計画するため、様々な住宅展示場も訪れました。大手不動産会社や建設会社の展示場から、ログハウスメーカーの展示場まで見学しました。けれども、多くは決まったプランがあり、わたしたちの希望に合わせるのは難しいのでした。
自分たち自身で描いたエスキースとフロアプラン。何度も何度も書き直しました


それだからこそ、「今度建てる家は、わたしたちの老後を過ごす最後の家になるのだから、建築会社の押し付けではなく、徹底的にこだわりたい」と強く思うようになりました。わたしと 家内は、ネットやインテリア雑誌などで好みの建築スタイルやデザインを探し、自分でエスキースやフロアプランを描き、お互いのイメージを何度も何度も話し合いました。二人の趣味を合わせると、わたしたちの好みは中世ヨーロッパで多く用いられていた木造建築工法のひとつティンバーフレーム工法で、古い田舎の農家の雰囲気を漂わす白い漆喰壁の小さな家なのでした。
2021年春、わたしの定年退職の時期が2023年12月末に決まったのを機に、いよいよ母屋を建てて移住するプロジェクトが本格化しました。わたしたちの理想の家を建ててくれる工務店を探すため、ネットで見つけた事務所を次々と訪れました。そして、わたしたちの思いと予算、スケジュール、土地の制約を理解してくれるmisumi建築工房に出会ったのです。2021年10月のことでした。
misumi建築工房は、木材の柱や梁をそのまま露出させる工法の真壁作りと、高気密・高断熱の外張り断熱の家を年間12棟限定で設計・施工されている横浜に本社を持つ注文建築の工務店です。真壁作りでは、室内が必然的に木に囲まれた空間となるため、木の風合いや質感を楽しめ、自分が自然の中にいるような安らぎが感じられます。また、経年変化による柱や床の木材の色合いの変化も楽しめます。初めて面会した時の代表取締役・三角豪氏は、物腰柔らかくわたしたちの話を良く聞いてくれて、「ああ、ここならばわたしたちの思いを受け止めてもらえるな」と感じ、工事請負契約を交わしたのでした。

建築中のわが家
以降、月に一度の頻度でmisumi建築工房のモデルルームに通い、打ち合わせを重ねました。担当者は何度も図面を描き直し、見積もりを再計算してくれ、プロとしてのアドバイスをしてくれました。2023年春にはわたしたちの土地を測量・地盤調査、2023年6月の地鎮祭、7月の着工、8月の上棟式と工事は順調に進み、2023年12月11日に完成・引渡しを受けました。
打ち合わせを重ねる中で、わたしたちは何度も迷い、不安を感じました。本当にこの土地に家を建てて良いのか、移住して大丈夫か、と考え続けました。心配のあまり、夜中に突然目が覚めるということも何度もありました。家を建てるということは、心理的にも社会的にも、そんなにも大きな意味を持っているのです。
まず、家は安全で安心できる場所であり、生活の基盤です。物理的なシェルターとしてだけでなく、心理的な安定も提供します。自分の家を持つことで、日々の生活における安心感が得られます。
次に、家を建てることは人生最大の出費であり、重要な目標の一つです。大きなプロジェクトを完了することで得られる達成感や自己実現の感覚は、わたしたちに大きな満足感を与えます。
また、家は家族の集まる場所であり、家族の絆を深める場です。コミュニティとのつながりを感じる場所でもあり、新しい家を建てることは家族や地域社会との新たな結びつきを意味します。
さらに、家のデザインや構造には、その地域の歴史や文化が反映されています。家を建てることは、文化や伝統を次世代に伝える手段ともなります。
最後に、家のデザインやインテリアは、個性や価値観を反映します。家を建てることで、自分たちの理想やライフスタイルを具現化することができるのです。
雪の日のわが家

こうした観点から、家を建てることは時に非常に難しい事業となるのであり、完璧は求めても得られないものなのかもしれません。自分自身で家を建てることができない以上、70~80点くらいに思えれば十分なのではないでしょうか。
わたしたち自身は、この家を見た地域の人から「落ち着いたデザインで雰囲気が良い」「品が良く地域にあっている」との声を聞いて嬉しく感じます。この新しい家が、わたしたちの人生最後の舞台、終の住処です。ここで、これからの、わたしたちの新しい物語が始まるのです。