連日、テレビのワイドショーで大谷翔平選手の活躍が報じられています。大谷選手が高校生の頃からマンダラチャートを使った「目標達成シート」を書いていたことは、よく知られています。マンダラチャートとは、9×9の81マスの中心に達成したい目標を置き、その周囲に必要な要素やアイデアを書き出すことで思考を可視化するノート術です。
わたし自身は、マインドマップをよく使います。中心にテーマを置き、そこから思いついたキーワードを枝葉のように広げていく。使うのは、少し大きめのA4ノートに4色ボールペンとカラフルな蛍光ペン。白いページを前に、頭や心に浮かんでくるものをただ書き出していきます。
マインドマップはイギリスのトニー・ブザン氏が開発し、商標登録もされています。その著書『ザ・マインドマップ』(ダイヤモンド社、2005年)によれば、自己分析やスケジュール管理、論文執筆からプレゼン資料作成まで、知的生産の場面で幅広く活用できるとされています。
しかし、どんなノート術を使うかよりも大切なことがあります。
書き出すことで、それまで気づかなかった自分に出会えること——それこそが本質だと思うのです。テーマについて深く論じようとするのでも、誰かに良く見られようと取り繕うのでもなく、ただ思い浮かんだことをそのまま書く。すると、自分の中に眠っていた思いや感覚が静かに浮かび上がってきます。
禅では「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という言葉があります。「まず足元を見よ」——他ではなく、自分自身の足元に目を向けなさい、という意味です。ノートに向かうことは、まさにこの実践に通じるものがあります。他者の目や社会の評価ではなく、自分自身の内側を静かに照らしていく作業です。
わたしは今でも1〜2週間に一度、ノートに向かいます。繰り返し同じテーマで書くこともあれば、そのときに気になる問題を掘り下げることもある。老後の田舎暮らしについても、何度もマインドマップを書きました。その度に、新しい自分を発見しました。そして驚いたことに、わたしたちは時として、自分が本当は望んでもいない考えを、いつの間にか「自分の考え」だと思い込まされていることさえあるのです。そうした思い込みは、心の中に静かな葛藤を生み出します。
自分の身体、意識、感情、思考に正直になること。それだけで、葛藤や混乱は少しずつ収まり、恐れは薄れ、自分自身の輪郭がはっきりと見えてきます。心の中の断捨離、とも言えるかもしれません。
禅語に「而今(にこん)」という言葉があります。「今この瞬間」という意味です。過去の後悔でも未来への不安でもなく、「今ここにある自分」をそのまま見つめること。ノートに書くという行為は、そのための静かな入口になり得ます。
定期的に書き、見直し、また書く。そのシンプルな繰り返しの中で、目標も暮らしも、少しずつ整っていきます。
まずは白いページと向き合うことから——ぜひ試してみてください。