みなさん、前回の6月25日の記事で書いたスモモの話を覚えていますか? 今回は、その続編として桃の話をお届けします。
昨日の朝、NHKの朝ドラを見ながらコーヒーを飲み終えた後、わたしは花壇で草むしりをしていました。その時、背後から軽トラックの音が聞こえてきました。振り返ると、メタリックグリーンの軽トラがバックでわが家のエントランスに入ってきたのです。
軽トラの色でKさんであることはすぐにわかりました。以前は軽トラといえば白色が当たり前でしたが、最近では若い人たちを中心に様々なカラーを選ぶ人が増えた印象があります。Kさんのメタリックグリーンの軽トラもひときわ目を引く色なので覚えていたのです。
Kさんはわたしのログハウスの裏の畑で、奥さまと二人で桃の栽培をされています。元々は大工さんでしたが、高齢のために仕事を辞め、この地で桃の栽培を始められたそうです。「歳をとってから夫婦二人でバカなことをやっているんですよ」と奥さまは笑っていましたが、とんでもありません。素敵なお話です。

この日は、「うちの桃、今年の初物です」と、Kさんが笑顔で立派な箱に入った桃を手渡してくれました。「日川白鳳」という品種で、箱の横には「特選 桃」「古くから国内屈指の産地として知られる山梨で厳選された水蜜桃です」と黄色いインクで印刷されています。どうやらこれはKさん自慢の桃のようです。ありがとうございます。
この地域のホームセンターでは、果物や野菜の収穫時期になると専用の化粧箱が販売されていますが、この黒い箱は初めて見ました。専業農家しか手に入らない特別な箱かもしれません。
山梨県は、桃の収穫量が全国一位。県内の市町村別では、1位が笛吹市(全国1位)、2位が山梨市(全国3位)で、わが甲州市は県内3位(全国4位)ということです【参考1】。人口2万8千人弱の甲州市が全国4位の収穫量とは驚きです。
さらに、わたしたちの住む甲州市塩山を含む峡東地域一帯が『世界農業遺産』に認定されている【参考2】ことをご存知でしょうか。『世界遺産』は有名ですが、『世界農業遺産』はあまり知られていないかもしれません。
世界農業遺産(GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。世界で26ヶ国86地域、日本では15地域が認定されています(令和5年11月10日更新)。【参考3】
山梨県の中でも『世界農業遺産』に認定されているのは、わたしたちが住む塩山を含む峡東地域一帯だけというのは、最近移住してきたばかりのわたしたちにとってもプチ自慢のひとつです。峡東地域は、日本のブドウ栽培発祥の地とされ、ブドウ「甲州」は平安時代にはすでに栽培されていたともいわれているそうです。また、モモ、スモモ、カキなども古くから栽培され、江戸時代にはすでに果樹の産地として知られていたということです【参考4】。
そればかりか、昔からこの地域で行われていた自生する植物を活かした「草生栽培」は、わたしが目指す自然農の畑とも類似していて、土壌の流出防止や有機物の補給、生物多様性の保全にも大きく貢献しているのです。

こうした果樹農業をベースに、枯露柿やワイン醸造などの加工品、約120年前に始まったとされる観光果実園などが発展し、世界に誇る特色ある地域を形成しているのが、わたしたちが移り住んだ峡東地域なのです。
わたしたち夫婦は毎日夕方に健康維持のためこの地域をウォーキングしますが、こちらの農家さんはどんな人にも「こんにちは」と挨拶してくれる素朴な方たちです。こうした飾らないコミュニティとのふれあいも、田舎暮らしの喜びのひとつです。
いよいよ、桃の収穫最盛期を迎えます。麓の観光農園では桃狩りやスモモ狩りなど、多くの観光客で賑わうことでしょう。