じゃがいもの花

畑を作る話

昨年12月末、ここへ引っ越して来て春先までにやらなければと取り組んだのは、畑を作ることでした。山梨のこの土地と東京世田谷の自宅との二拠点生活をしているころから少しずつ野菜作りを始めていましたが、そのころは月に一度来るのがやっとでした。手のかからない澱粉質の多い作物しか作れなかったのです。ジャガイモとかカボチャなど放っておいても育ってくれる作物ですね。

しかし、ようやくこちらへ移住してきたので、これからは毎日のように作物たちの手入れができるのです。まずは母屋の裏にそれなりの広さできちんとした野菜のキッチン・ガーデンを作ろうと挑戦したので紹介いたします。

自然農の話

1. 慣行農法について

野菜畑を作るにあたり、化学肥料や農薬を使用する慣行農法は避けたいと思いました。慣行農法には品質や収量が安定し、除草や防虫の手間が省けるというメリットがありますが、大きなデメリットも二つあります。

ひとつは、化学肥料が自然界に与えるネガティブな影響です。例えば、土壌汚染による微生物や昆虫類の死滅、化学成分が地下水を通じて水辺の生態系を破壊することなどが挙げられます。これによって自然のサイクルが乱れ、環境を破壊し、気候変動にもつながります。

ふたつめは、農薬が健康に及ぼす影響です。アメリカでは、強力な除草剤の影響で末期癌になったとして農薬製造会社を訴え、勝訴した例があります。生産者だけでなく、消費者にとっても慣行農法で栽培された作物の残留農薬の健康への影響が心配されます。【参考1】

2. 有機農法について

わたしたちは自然豊かな地域での田舎暮らしを生かして、健康被害を心配せずに安心して食べられる野菜栽培を目指したいと思います。しかし、最近流行りの有機農法を実践することはそんなに簡単ではありません。

国際的な政府間機関であるコーデックス委員会が策定したガイドラインでは、有機農業を次のように定義しています。【参考2】

「有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである」

日本では、このガイドラインに準拠して「有機農法の推進に関する法律」が制定されています。この法律では、有機農法を次のように定めています。【参考3】

・化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
・遺伝子組換え技術を利用しない
・農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する農業生産の方法を用いて行う農業

    注意が必要なのは「日本の有機農法=農薬・肥料を一切使用していない」というわけではなく、日本では有機JAS認証が認めた特定の農薬や肥料・土壌改良資材を使用することができるのです。また、認証を受けるためには講習会への参加、登録認定機関への申請、圃場実地検査、判定委員会による審査などが必要となるのです。

    3. 自然農について

    わたしはプロの農業生産者ではないので、「オーガニック野菜」や「有機野菜」と表示して野菜を販売するわけではありません。わたしたち夫婦と友人に分けられる程度の収量でも構わないので、自然で安心して食べられる家庭菜園を目指しています。そのため、無農薬、無肥料で自然環境に優しい自然農法が理想的だと思っています。

    自然農法のルーツには二人の代表的な提唱者がいます。その一人、岡田茂吉氏は1935年に無農薬・無肥料で育てる自然農法の基本理論を構築し、もう一人の福岡正信氏は不耕起・無農薬・無肥料・無除草という自然農法を提唱しました。現在では、他にもさまざまな書物やインターネット情報で自然農、自然栽培、炭素循環農法、協生農法など類似の試みが紹介されています。以下にわたしが普段、参考にしている情報源を挙げておきます。

    これらのうち、どれが正しく、どれが間違いということはありません。同じ作物でも、土壌や地域によって栽培方法が異なるのは当然です。わたしはこれらの書物や情報を参考にしつつ、自分の畑に合った栽培方法を模索し続けるしかないと思っています。

    4. わたしの自然栽培

    わたしには「これがわたしの自然栽培だ」と言えるような完成した技術としての農法はありませんし、そうした農法を作りたいとも思いません。不耕起・無農薬・無肥料・無除草という基本方針を守りつつ、必要に応じて作物が育ちやすいように手助けをしています。心構えとして、作物の成長を助ける土中の微生物や菌を増やし育て、畑の土そのものを育てることが大切だと考えています。

    いよいよ畑を作る

    理屈はさておき、具体的な畑作りの話に移りましょう。畑を作った場所は家の裏側、キッチンの勝手口のすぐ側です。家を新築する前は5m x 8mほどの広さの畑の場所でしたが、地盤調整のために砕石混じりの土砂を入れたため、畑は初めから作り直しになりました。

    新たに寸法を測り、3m x 7mの畑を作ります。幅1m x 長さ3mの畝を5本、畝と畝の間には50cm幅の通路を設けました。畝は一度作ったら耕さず、肥料も与えない不耕起・無肥料の畑を目指します。

    まず、畝を作る場所の下草を刈り、整地した後に四隅に杭を打ちました。次に、作物が根を伸ばせるように、耕盤層(硬盤層や不透水層ともいう)を崩すために50cmほど掘り下げます(写真左)。大きな石は取り除き、硬い土層が出てきたらショベルやツルハシで崩します。それから、籾殻くん炭をまいて、昨秋刈った木質系の草や枯れたススキ、落ち葉や枯れ草、バーク堆肥を敷き詰めます(写真中央)。堆肥には植物性堆肥と動物性堆肥がありますが、わたしは高い土づくりの効果が望める植物性のバーク堆肥を選びました。樹皮を堆肥化したバーク堆肥は、土中でゆっくり分解するので有機物の少ない砂質の土壌改良に有効だといわれています。最後に掘り返した土を畝に戻し、少し高めに盛り上げて形を整え、表面に枯れ草を敷いて保護します(写真右)。

    この作業を畝5本分繰り返し、1週間ほどかかりました。畑を作る最初だけの土木作業です。

    ジャガイモを植える

    最初に植え付ける作物は、春じゃがいもです。アンデス山脈の高地出身のじゃがいもさんは、痩せた土地でも育てやすいというタフな野菜。土がまだ充実していない新しい畑で育てるにはぴったりです。こうしたタフな作物を育てながら、少しずつ畑の土を成長させていかなくてはなりません。

    今回、選んだ品種は「キタアカリ」。男爵とツニカのハイブリッドで、黄色い可食部とホクホクの甘みが特徴です。種芋を50~80gにカットして、2~3日乾かします。乾燥中の種芋たちに「頑張ってね!」とエールを送りつつ、15cmの深さに30cm間隔で植えつけます。ちょっと早いかなと思いつつ、3月3日に植えました。

    じゃがいもは植え付けから芽を出すまでおよそ1ヶ月ほどかかります。頭では分かっていても、毎日のように「もう芽が出たかな?」とチェックしてしまいます。まるで子供の成長を見守る親か、あるいは夏休みで絵日記をつけている小学生のようですね。遅霜が心配でしたが、4月上旬に無事に芽が出てきてホッと一安心。5月中旬には花も咲き、順調に育っています。初めての畑でのじゃがいもの収穫が今から待ち遠しいです!

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